好色一代男 (中公文庫)

井原西鶴の「好色一代男」を吉行淳之介が翻訳したものである。もともとは１９８１年に刊行されたもの。主人公・世之介の一生を辿っていくという内容。世之介は、女色男色にふけっていた通称・夢介が身受けした遊女に産ませた子である。世之介もまた、大の女好き。世之介は１５歳のときに後家に誘惑され、彼女を妊娠させてしまい、あっさりと捨て子にしたりもしている。世之介の女遍歴（＋衆道）の旅物語なのだが、ほとんどの相手は遊女である。親にも勘当されるのだが、３４歳のときに父が死んで大金を遺産相続する。こうしてプラプラしながらいつしか世之介は６０歳になり、親なく子なく定まった妻もなく、すっかり浮世にも心残りがなくなる。世之介は、数人の友を女つかみどりのできる女護の島に行こうと誘ってそのまま行方しれずになる・・・という話。もともと、宗教、道徳、幕府の押し付けた制度として、恋愛が罪悪視された時代に愛欲の自由を主張したことが「一代男」の意義ではないか、というのが吉行さんの解説である。西鶴は長い間注目されないまま埋もれていた作家で、明治になって樋口一葉、幸田露伴、尾崎紅葉らによって再発見されたそうである。世之介のエピソード集（ほとんど女とのあれやこれやな話）であり、小説の構想とかスジみたいなものはあまりない。